しるし 5 ―Side Athrun





「──アス…ラン…?」

パタパタと走ってきたキラは俺の姿を見るなり足を止めて。ただでさえ大きな瞳を更に大きくして俺を見つめる。

「キラ、起こして悪かったな」

ロビーのソファーから立ち上がって言うと、キラはそれには答えず、

「な…何で君が…ここにいるの…?」

驚きの表情を見せてながら目を何度もパチパチさせた。

「何でって…お前に会いに来たんだ」
「………」
「…来ちゃいけなかったか?」

目を丸くしたまま黙っているキラに心配になって近づくと、キラは口をポカンと開けたままじっと俺を見つめる。

「キラ?」
「……ホントに…アスランなの…?」
「え?」
「だって…何でアスランが…これ…夢じゃないよね?」

…どうやら突然のことにキラは混乱しているみたいだ。
その様子が何だかおかしくて、俺は微笑みかけながらキラの頬に手を伸ばした。

「夢じゃないよ。ほら?」
「…あ…」

キラのやわらかいほっぺたを摘む。

「…痛い…」

ぽつりと呟いて、確かめるように俺の手に自分の手を添えた。

「…ホントにアスランなんだ…」
「お前…人をオバケかなんかみたいに…」
「だって…まさかアスランがいるなんて思わなかったんだもん…」

そうキラはまた黙ってギュッと目を瞑ると、

「…アスランに会いたかった…」

そう小さく呟いた。

「俺も…ずっとキラに会いたかったよ…」
「うん…僕もずっと会いたかった…っ…でも…言ったらきっと我慢出来なくなっちゃうからって…」
「俺も…同じこと考えてたよ…」
「アスランも…?」

顔を上げたキラのアメジストの瞳は涙で潤んでいて。

「キラ…久しぶり」
「アスラン…っ」

込み上げてくる愛しさに、キラを強く抱きしめた。

「ん…っ」

強く抱きしめられてキラは小さく声を洩らすと、俺の肩に顔を埋めると腕を体に回す。

「…やっぱりアスランだ」

とクスッと小さく笑う声が聞こえた。

「キラも…相変わらず細いな。ちゃんと食べてるのか?」
「食べてるよ」
「どうせ我が儘言って嫌いなもの残してるんだろ?」
「……あ、ラクスは?僕、ラクスに呼ばれてきたんだけど」
「話ずらしたな……ラクスは帰ったよ。今日はキラの部屋に泊めてもらえって」

そのつもりだったけど、と耳元で囁くとキラの耳が一気に赤く染まった。

「あ、もしかしてラクスも君が来るの知ってたの?!」
「あぁ、カガリが先に連絡してたみたいで…」
「…ん?ってことはみんな僕に黙ってたってこと?!」
「…まあな」
「えぇ〜!?僕、アスランからメールなくて心配してたんだよ?!」

キラはとたんにほっぺを膨らませて、上目使いで睨んでくる。
白を来たキラがそんな風に怒るのを見て、思わず溢れてしまう笑みにキラはまたムスッとした。

「ちょっとアスラン?!」
「ごめん…可愛い上官様だなと思って」
「アスランっ!わ…っ?!」

そんなキラの躰をひょいっと持ちあげて“お姫さまだっこ”にする。

「ちょ…っ…アスランっ?!」
「『お姫さま』の機嫌治すに決まってるだろ?お姫さまの部屋はどこ?」
「もう…何それ…」

恥ずかしがりながらも首に回されるキラの手。
俺たちは顔を見合わせてクスッと笑った。








◇◇◇






ベットの上にキラをそっと降ろす。
首に回した腕を離そうとはしなくて、黙ったままキラは名残惜しそうに俺を見つめる。

「キラ…」
「ん……」

軽くキスをすると更にそれを強請るように、その腕に力が入った。

「…ン…」

唇を離して見下ろすとキラの頬が桜色に染まっていて。

「機嫌は直りましたか、お姫さま?」
「…もっと…しないと直らない…」
「はいはい」

唇を尖らせるキラが可愛くて、小さく笑うともう一度キスをする。
久しぶりに触れた柔らかいキラの唇を確かめるように、角度を変えて何度も重ねた。

「ん…アス…?」
「…どうした?」
「…嬉しい…アスランに触れられるなんて…」

キスの合間にそう言ってキラは微笑む。

「…俺もキラに触れたかったよ…」
「アス…ん…っ」

また重ねて舌で唇を突けば、そっと開いて俺を迎え入れるキラ。舌を差し入れて深く口付けをした。

「ん…ンぅ…」

キラの躰をそっとベットに寝かせて。歯列をなぞったあと、舌を吸い上げると甘いキラの唾液が次々に溢れてくる。それを絡め合いながら久しぶりのキスを貪った。

「ン…ふ…ぇ?」

糸を引きながら唇を離すと、すでにとろんとしているキラの瞳。

「キラ…抱いてもいい?」
「…ぅ…ん…」

コクンと小さく頷くキラの軍服の上から躰をまさぐると、それだけでピクッと震える。

「…なんかまた敏感になってるみたいだな?」
「っ…」

真っ赤になっていく顔を見下ろしながら、襟を開けて白い首筋に唇を寄せるとそれだけで吐息を洩らすキラ。
前を開いて、アンダーシャツの中に手を忍ばせた。

「ぁ…アスラン…」

恥ずかしそうにもじもじとしているキラだが、見つけた小さな突起に触れると面白いほど反応を示す。
指で摘むと小さいながらも固くなっていくそこを弄りながら、もう片方に舌を這わせた。

「んン…っ、ん…ぅ」
「キ〜ラ、声聞かせて…?」
「ぁ…やぁ…っ」

久しぶりの行為に感じ過ぎてしまうのか、羞恥心が強いキラは口を手の甲で塞いでいて。それを剥がしてベットに押さえつける。
紅く染まった小さな突起をちゅう…っと強く吸うと、

「っやあぁ…っ」

ビクンと跳ねて大きな声を上げた。

「…いい声出たな」
「ぅ…ふぅ…あぁ、ひっ…噛んじゃ…だめぇ」

歯を立てたりしながら執拗にそこばかりを責めていると、キラは恐らく無意識なのだろうが腰を揺すりだす。
覆い被さった俺の下でキラ自身が変貌しているのがよくわかった。

「んぁ…っ…ふ…アスラ…ン」

そのまま胸への愛撫を続けていると、焦れったいのかキラは涙が溜った瞳をうっすらと開けて俺を見る。

「なに?キラ」
「ぅ…そこばっかり…やだ…」
「そうか?感じているみたいなのに…」
「っひぁ…ッ」

固く尖がった乳首を指できつく摘んだ。キュッキュッとこね回すと、躰を震わせながら股間を俺の腹部に擦り付けるように動かしてくる。
焦らすのも限界か…

「キラ、久々なんだからちゃんと聞かせて?どうされたいのか…」
「ふぅ…アス…お願…ぃ…さわって…ぇ?」

小刻に震えながら素直に呟くキラに見かねて、布を押し上げているそこに手を伸ばした。

「っアァ…ッ」

その途端、ビクンと背を反らして一際大きな声を洩らすキラ。
ズボンに手をかけファスナーを下ろすと、先走りでぐしょぐしょに濡れたキラの下着が目に入った。

「…すごいな…」

思わず洩れた呟きにキラは躰を硬直させる。
足元へ移動し、ズボンを脱がしながらその染みに口を付けた。

「ッ?!や…ぁ」

湿った布の下でピクピクと動くキラのそれ。
下着もずり下ろすと先端に蜜を湛えた中心が露になった。

「うぅ…ふ…ぅ…」

見られて恥ずかしいのか、キラは涙を溢し出す。泣かなくてもいいだろ?と宥めながら、そっとそれを握った。

「やぁっ…あ…アァ」

掌の中で熱く脈打つ中心をゆっくりと上下させる。先端の小さな割れ目から更に透明な蜜が溢れて、トロリと手を伝う。

「そうだ…キラ、一人でした?」
「ッ!?」

気になって聞いてみるとキラはビクッと跳ねる。問いかけに明らかに焦っているのがわかった。

「キ〜ラ?」
「っん…や…ぁ」

根本をギュッと握り、そのまま止めてみる。
答えないとこのままだというのがわかってるのだろう、躊躇いながらもキラは唇を開いた。

「…ごめ…僕…さっき…」
「え?」
「…ガマン…出来なくて…だから…っ」

(さっきって…)

予想しなかった返答に驚いていると、キラはポロポロと涙を溢しだして。それが悪いことだと思ってしまっているのか…さっきから泣いている理由が何となくわかった。

「キ〜ラ?大丈夫だから…何考えながらしたんだ?」
「んぁ…っ」

なだめるように優しく囁きながら、ゆっくりと手の動きを再開する。

「はぁ…アスラ…ン…のこと…っ…」
「俺のこと想いながらしてくれたんだ…」
「ふぅ…ンん」

震えながらコクコクと頷くキラ。キラが俺のことを想いながら慰める姿を想像して、胸が一層高鳴るのを感じた。

「…俺も…キラのこと考えてしたよ…」
「ぇ…?ひっ…」

足の間に奥まった、小さな蕾に指を伸ばす。
やや湿り気を帯びたそこを撫で付けて、ぐっと指先を挿入した。

「は…あぁっ」
「…ここ…キラの狭くて熱いこの中に入っていると思いながら…」

ギュウッと千切りそうな勢いで指を締め付けてくるキラの腸壁。何度この中にいることを考えただろう…
挿入した指を更に奥へと差し入れようとした途端、大きく跳ねるキラの躰。

「アァッ…や…出ちゃ…っ」

手の中でドクッと脈打つキラのそれを急いで口に含んで。

「ひ…っあ…アァッ」
「ッ…」

弾きだされた白濁を受け止めた。

「はぁ…っ…ぁ…ごめ…」
「…美味しかったよ。ご馳走さま」
「っ…」

精を吐き出したにも関わらず久し振りの情事に興奮している為か、まだ治まらないキラの昂ぶり。多少萎えたそれの側面をチロッと舌で這う。

「っひ…ぁ…アス…」

直ぐに反応して容量を増していくキラのそれ。

「あぁ…っ…も…アス…ランの…ほしい…」

とキラはシーツを掴みながら訴えてきた。

「キ〜ラ、久し振りなんだからちゃんと慣らさないと痛いだろ?」
「う……」

おあずけをくらった子どものように涙を溜めた瞳で俺を見つめる。
キラが望むように与えてやりたいが、キラが痛い思いをするのも正直辛い。

「気持ちよくしてあげるから…ほら、足開いて?」
「ン…」

キラも理解したようでギュッと目を瞑ると、シーツの上を滑らせながら白い足を開いた。

「もっと開いて」
「あ…っ」

開いた足の太股に手を添えてぐっと押し上げる。腰が浮き、指を銜えてキュッとすぼめているキラの小さな蕾が晒された。
こんな小さな孔に昂ぶりを収めると思うと興奮を覚える。が今はキラを傷つけないように顔を寄せると、指で僅かに拡がったそこに舌を這わせた。

「あぁ…っ」

蕾に触れる舌の感触にキラは上擦った声を上げる。

「や…いゃ…ぁ」

キラはこれだけはよほど恥ずかしいようで、いつも嫌々と首を振る。

「キラ…素直に感じればいいから…」
「ふぁ…っ…アス…ぅ」

閉じようとする足を押さえながら、舌と指で丁寧にそこを介していった。

「ンぁあ…っ…は…ぅ」

足の爪先をピンと立て、キラは快楽に声を漏らす。
緩んできた蕾に指を増やしながら内壁を擦ると、俺の唾液とキラから分泌される体液で卑猥な音が響いた。
俺は乱れ始めたキラに煽られながら、キラの中でぐいっと指を折り曲げて壁を押す。

「っあ…ッ」
「…見つけた」

ビクンと背中を大きく反らせるキラの反応に、そこが敏感な部位だということがよくわかって。何度も擦り付けるように指を動かしだした。

「ひッ…アァッそこぉ…っ」

弱い所を刺激されて矯声を上げるキラ。

「いゃ…あっ、また…イッちゃ…ぅぅッ」
「いいよ…キラ、可愛い…」
「やだ…ぁっ…指じゃ…アスランのが…いい…っ」

そう叫んで絶頂を迎えまいとキラは全身に力を込める。

「わかった…」
「っふ…ぁ…っ」

グチュ…っと音をたててキラの中から指を引き抜いた。

「キラ…一緒に気持ちよくなろう?」
「ふ…ぁ…ぅん…」

開いた口から吐息を洩らしながら頷くキラ。
自分のズボンに指をかけて下ろしていると、キラの手がそっと伸びてくる。

「キラ…?」
「ぁ…アスランのも…すごい…」
「っ…!」

キラの姿に煽られて昂ぶった自身にその指が絡んできて。確かめるように撫でられ、更に容量を増す俺自身にキラは驚きながらも嬉しそうに微笑む。

「嬉しい…アスランも感じてるの?」
「…当たり前だ」
「わ…っ」

キラの足首をぐいっと掴み、開かせると蕾にそれを宛てて。

「俺もキラが欲しくて…満たしたいからこうなるんだろ?」
「あぁ…っ」

先端を押し入れると、緊張してか強張るキラの躰。

「キラ、ゆっくり息吐いて…」
「ふぁ…は…っ」

息を取り込もうと震える唇を開くキラに合わせて、ゆっくりと中へと押し進めた。

「あぁ…っ…アスラ…ッ」

ギュウッとしがみついてくるキラの腕の強さにも懐かしさを感じる…
慣らしたとはいえ、久々の行為に痛いくらい締め付けてくるキラの内壁に、俺も堪えながら中を貫く。

「ッ…キラ…大丈夫か?」
「ふぁ…あっ…ぅ…」

眉根を寄せて、かたく瞑った目の端から涙を溢すキラ。でも俺の呼び掛けにうっすらとアメジストの瞳を見せて。

「はぁ…っ…アスランが…僕の…中に…いる…」

そう嬉しそうに呟いた。

「あぁ…俺もキラの中にいるんだな…」

俺自身を包み込むキラの熱い内壁。ヒクヒクと蠢くそこはそれだけで快楽をもたらす。
俺はそれを味わいながら、ゆっくりと腰を引くとキラの中へ埋めた。

「アッ…あぁっ」

しがみついて声を上げるキラ。荒い息使いを耳元で聞きながらキラの中を大きくグラインドする。

「ふぁっ…あ…アスラ…ッ」
「ッ…キラ…!」

高く上がったキラの足が、まるで逃すまいと俺の腰に絡みついてきて。思わず放ってしまいそうな欲望に動きを止めて、息を飲み込んだ。

「はぁ…アス…ラン…?」
「っ…ごめん…ちょっと待って…」

キラを抱き締めたままそれに耐えていると、

「…いいよ?…アスランの…中に欲しい…」
「ッ…!」

そう耳元で呟くキラの声。ぷつっと糸が切れたかのように俺はキラの躰を激しく揺さぶると、その奥に欲望を放つ。放たれた欲望を受け止めてキラはビクンと震えた。

「ふあぁ…アス…ランの…熱…ぃ…」
「…キ…ラ…」
「あ……」

うっとりと洩らす声に直ぐ反応してしまい、キラの中で再び容量を増していく自身にキラは小さく声を上げた。

「あ…アスラン?ん…あぁッ」

そんなキラを抱き起こして座った俺の上に乗せる。自分の体重もかかって奥まで埋め込まれる塊にキラは大きな声を上げた。

「キラ…顔見せて…」
「や……」

恥ずかしがって逃れようとするキラの頬を掌で包み込む。赤く蒸気した顔はとても可愛いらしくて、思わずその濡れた唇を奪い取る。

「んっ…んう…」

激しく貪ると躰を支えようと俺の背中に回されるキラの腕。片方の手でキラの細い腰を支えると、そのままキラの中を突き上げた。

「っん…ふ…ンむ…ぅ」

苦しそうに吐息を洩らしながらも離そうとはしないキラの唇の隙間に舌を忍ばせて。それに伸びてくる舌を見つけて絡める。

「んふ…ぅ…ァ…ふ」

動くたび繋がった部分からクチュクチュと音が響く。先ほど放った俺の欲望とキラの体液が混ざってとろりと流れ落ちていく。
気づけばキラの腰が揺れていて。俺は頬に宛てていた手をキラの中心に伸ばした。

「んぁ…っ?!」

触れた瞬間、唇を離して声を上げるキラ。
先端から溢している蜜で濡れたそれを握り、中を突くのと一緒に上下に擦る。

「ひゃ…っ、アッ…あぁっだめ…ぇ」

しがみつく腕に一層力が込められる。刺激されてビクビクと動く内壁に激しくキラを揺さぶった。

「ひぁっ…アス…アスぅ…僕…もぉ…っ」
「キラ…イッていいよ…」
「はぁ…あ…アス…愛してる…」
「キラ…ッ…愛してるよ…」
「あぁ…っアァァ──ッ」

のけ反った躰を痙攣させて絶頂を迎えるキラ。

「ッ…!!」

まるで煽るかのようにぎゅう…っと締め付けてくるそこに堪らず、腰を掴むと激しく突き上げてキラの最奥めがけて熱を放った。

「ン…は…ぁ…アス…」
「キラ…大丈夫か?」
「ん……」

こてん…とキラは俺の肩に顔を埋めて。そのまま背中を撫でていると寝息が聞こえてくる。
そっと横にして寝かせるとキラはもにょもにょと口を動かした後、またスースーと寝息をたて始めた。

「…こうして見るとやっぱり変わらないな、お前は…」

小さな頃から見慣れた寝顔。離れていたことが嘘のように埋まっていく──…






「…おやすみ、キラ…」

幸せそうに眠るキラに軽くキスをした。






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