しるし 3 ―Side Athrun





『アスラン…またね』


あの日、キラが身に纏った“白”は何だかとても眩しくて。
一瞬、俺は手が届かなくなりそうな錯覚に陥った──…






「──…ラン……アスラン!?」

バシッ

「っ痛?!な…」
「アスラン!もう…何度呼んだら気がつくんだ…」
「カガリ…すまない…」

横を向くとそこに仁王立ちしたカガリがいた。
その手にしたファイルで俺はどうやら叩かれたらしい。

「どうせキラのことでも考えていたんだろ?お前がぼーっとしている時は大概それだからな」
「……」

情けないがカガリの言うことは正しくて言葉も出ない。

「最近連絡取ってるのか?」
「あ、いや…向こうもなんだか忙しそうで…俺も俺でやることがあるしな…」
「ったく…お前らは…」

カガリは呆れたように溜め息をついた。
それこそメールは毎日しているものの、時間が合わなくて返信が遅くなってしまう時もあれば遅い時もある。顔を見て話せることは少なくて…
プラントにいた自分がこんな風に言うのも変だか、思ったよりも地球とプラントは遠いようだ。


 “会いたい”


そう口にすればあいつはきっと泣くだろう。
それに俺もすぐに飛んでいって、キラを抱きしめたい衝動に駆られてしまうから…


「──アスラン?!」
「あ…」
「また……お前大丈夫か?」
「…大丈夫だ」

自分でも呆れて溜め息をついた。

「それで用事があって来たんだ。私の代りにこの書類を届けてくれないか?」
「そんなのメールで送れば…」
「大事な書類だから直接持ってて欲しいんだ」
「何処に…?」

カガリに手渡された書類に目をやる。するとそこに書かれていたのはラクスの名前。

「こ、これ…まさか?!」

慌ててイスから立ち上がる。

「…会いに行ってこいよ。それにお前がそんな風だったらこっちが困るんだぞ?」
「カガリ…」
「キラとラクスによろしくな。それと先に言っとくけど、帰ってきたら仕事、山のように用意しとくからな!」
「あぁ…わかってるよ」

笑いながら俺は頷いた。





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