しるし 1 ―Side Athrun
「え…お前がプラントに…?!」
「…うん…」
そう静かに頷くキラはかすかに微笑みを浮かべていて。
「今、自分に出来ることがあるならそれをしたい…そう決めたんだ」
「キラ…」
ラクスがキラを必要としているのは知っていた。混乱しているプラントの情勢の中、キラはきっと大きな力になるだろう。
「なら俺も…っ」
「…言うと思った」
そうキラはまた微笑んで俺を真っ直ぐ見つめた。
「でもね、僕がプラントに行くからこそ、アスランにはオーブを守って欲しいんだ。君にはそれが出来る……今度こそ平和で…笑って暮らせる世界を作らないきゃ…だから今は…」
「キラ…」
話すキラの大きな瞳は必死に涙を堪えて揺れる。
俺が渡したトリィを手に抱いて、俺を見つめていたあの頃を思い出した。
『キラもそのうちプラントにくるんだろ?』
あの時そう言った俺を、今にも泣きそうなのを堪えて…キラは黙ったまま見つめていた。
そして再び会ったのは戦火の中。一緒に来いと誘いを断ってお前は戦う道を選んだ。
あの時あんなにザフトに来ることを拒んだお前が、今、自らの意思でそこに身を置こうとしているなんて…
でもそれだけ世界は変わってしまったんだ
だからこそ俺たちにはやらなければならないことがある…─
「…わかった…」
「アスラン…」
濡れたアメジストの瞳を向けるキラに俺は微笑んで。そしてキラの躰にそっと腕を回して抱きしめた。
「キラ…離れていたって夢は同じだろ?」
「アスラン…」
「いつかまたお前と一緒にいられる世界を…だから…」
「…ん…っ…」
キラは俺の肩に顔を埋めて頷く。
「だから今は頑張ろうな」
そう囁きながら、小さく震えるキラを強く抱きしめた。
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